心の瞳

3.11 今年もコミュニティプラザの旧南中のピアノで、黙祷後に花は咲くを演奏させていただきました。

11年前は、被災地のためにと言いつつ、自己顕示欲も大きかった。被災地のために行動する自分、という鎧を着ていたから、鎧を纏う余裕もない方達を前に、何もできることはなかった。でも、そんな自分を自覚し恥じたことも、大切な経験です。

昨年の演奏は、10年の節目を理由にした、私の叫びだった。何かせずには保てない自分に、差し伸べられた機会。被災地に思いを馳せるというよりは、震災後に経験した自分のこの10年の思いを込めていたと思います。

でも、そんな私の演奏に涙を流した方がいたこと。お互いに何も知らない、ただ居合わせただけの人間同士の中に、何か伝わるものがあった。その時、私が10年ずっと(ひょっとしたらそれ以前から)探していた音楽が、生まれていることに気がついた。素晴らしい経験でした。

今年は、ただただ静かな祈りがあったように思います。告知もせず、目的もなく、ただそうしたかったから弾かせていただいた。まあ、あんまり人がくると緊張するのもありますが(笑)

もう誰の評価も気にすることはない。結局また評価を気にすることもあるかもしれませんが、そこを一度乗り越えた経験は大きい。

私はピアノが上手くありません。下手だ、と言われれば、そうなんですごめんなさい、と今なら素直に言うでしょう。私の音楽を、今を生きていることへの感謝を込めて。上手い下手では計れない、私の音楽。ただそれだけで十分だと思えます。

花は咲くを弾いて、そのまま終わろうと思いましたが、通りがかりのご婦人方がにこやかに「もう一曲お願いします」と仰るので、悲愴の第二楽章を弾きました。顔を上げると、ご婦人方がいない。いや聴かないんかい笑

オチもついたので、それでは。と立ち上がると、意外にも二階のロビーから声がかかる。「今のはベートーベンですか。もう一曲、何かお願いできませんか」失礼ながら、作業着をきた見た目からは想像もつかない言葉。

うーん、声がかかったら二曲目は悲愴を、と考えていたけど、その次は想定外で、iPadの楽譜リストを見る。多くの中から一曲、目が止まる。

三曲目は、坂本九の「心の瞳」

心の瞳と、絢香の「にじいろ」は、合唱部の子たちと何度も演奏してきた、私も子どもたちもお気に入りの曲。

「心の瞳で君を見つめれば
愛すること、それがどんなことだか、わかりかけてきた」

思いを込めてピアノでうたう。ピアノはやさしく応えてくれました。

弾き終わると、リクエストしてくれた方が堰を切ったように話してくださった。

「これは子どもが中学生の時に、合唱祭で聴いた曲です」

目が輝いている。ああ、伝わったんだなあ。私のこの曲への思い入れを、その方は知らない。その方の思い入れも、私は知らない。でも、音楽で繋がり、通じ合える。

心の瞳で見つめること、私のこの11年の問いの一つだったと思います。答えを探してきたし、ずっと探している。

でも一つ掴んだのは、表面に出ていることでジャッジしてはいけないこと。「あいつは悪い」と誰かが言っていることと、実際に悪いかどうかは、別の問題だということ。

プーチンが悪い。いや、ウクライナだって悪い。アメリカも悪い。いや誰も悪くない。そうジャッジすることは簡単だけど、本当にそうだろうか?誰が正しいのだろうか?正義って?

自分が正しいんだ、お前が間違っている!と主張すれば必ず争いになり、結局お互いに傷つくことは私自身が身をもって経験してきた。人それぞれ、価値観がある。どんな主張にも、その人なりの理はある。人は皆、違うから。

でも違いを認めることは、怖い。自分にも向き合わないと、違いが認められないし、特に自分にとって受け入れ難い違いは…
本当に勇気がいることなんですよね。

今世界を舞台に起こっていることは、必ず私たちの身近にも起こっているはずです。憎み合い、対話を拒否し、攻撃する。この戦争で起こっている全てのことは、日常の中にもある。しかしその逆もまた起こっているはずです。身近な日常にも、大きな世界にも。

誰の心の中にもプーチンはいるし、ヒトラーもいる。プーチンが悪いと非難をしても、あいつはおかしいと切り離しても、どうにもならんと目を背けても、きっと争いは止まらないんですよね。どうしたら良いのか、日々自分自身に問いかけています。

逆に言えば、ひとりひとりの力は小さくとも、できることはあるということになります。私たちがそれぞれ自分の身近な人に笑顔で接する。思いやり、ともに生きる。対話し、互いを理解し、認め合う。小さな平和を、身の回りに一つでも多く。

私は争うことや、声をあげることが苦手です。でも私なりのやり方で、いつも問いかけ内省することで、不戦の思いを示したい。

きれいごとかもしれません。現地に行けばそんな余裕はないでしょう。生きるために殺さなけらばならない人もいる。でも私は希望を持って、私のできることを形にしたいと思います。

冬の後には春が来る。3/11のピアノ演奏を、ずっと続けていこう。

歌が聞こえてくる。
心の瞳できみを見つめれば…